房総の魚たち・陸っぱり釣り師の備忘録

房総の陸っぱりを中心とした釣行と、釣魚料理の記録。釣りのジャンルは、浮きフカセ、シーバス、陸から少し離れたボート釣りなど。これまで釣った房総の魚たちを紹介する「房総釣魚図鑑」や、エッセイなどもアップしていきます。

馴染みの店① 赤ちょうちんデビュー

酒や食のエッセイが好きでよく読む。古いのは、池波正太郎の「散歩の途中にちょっと食べたくなって」、北大路魯山人の「魯山人の食卓」、開高健の「地球はグラフのふちを回る」「ロマネコンティ1935年」、山口瞳の「美酒礼賛」「酒食生活」「行きつけの店」、近いところでは、太田和彦の「超・居酒屋入門」、山田五郎の「銀座のすし」、西川治の「世界ぐるっと肉食紀行」、ちょっと変わったところで、神足裕司西原理恵子の「恨ミシュラン」、漫画では古谷三敏の「BARレモン・ハート」など。

当然ながら、酒を飲むのは嫌いじゃない。ここ最近、50歳を目前にして飲み方が少し変わってきた。これまでは、酒=宴会という図式だったけど、一人で飲むのが楽しくなってきた。それに合わせて、酒の種類もビールから、日本酒やワインに変わってきた。家で下手なギターをつま弾きながら、ちびり。サイゼリアで、スマホにダウンロードした落語を見ながらちびり。出張先で、地酒・地魚でちびり。そしてつい先日、地元で「赤ちょうちん」デビューを果たした。

その店は、いうなれば「天ぷら割烹」で、3年くらい前に地元駅裏の路地にオープンしていて、早くからを気にはなっていた。以前は、小さなイタリアンレストランで、一度妻と入ったことがある。10人でほぼ満席になる広さだ。(天ぷら屋で一杯。乙だねぇ)。いつかは行きたいと思っていたが、なかなか機会は訪れなかった。妻が習い事をしている関係で水曜日は外食になる。一人酒が楽しくなってきたことも手伝い、今年(2017年)の7月の水曜日、ついに暖簾をくぐった。

店に客は一人もいなかった。カウンター越しに「いらっしゃい」と白髪でやせた大将。髪は白いがそれほどの歳でもなさそうで、たぶん50-60歳くらいだろう。「おひとり?こちらへどうぞ」と、カウンターに案内された。冷酒を頼んだ後、「おまかせでお願いします」と言った。人生初の「おまかせ」である。さぁ、いくらふんだくられるのか。「じゃあ、天ぷらにしますか」と大将。

酒は、千葉の地酒菊一輪の純米。お通しは、根菜煮しめ。刺身は、キハダマグロの赤身。天ぷらは、ミョウガ、コーン、シイタケ、アスパラ、エビ、稚鮎、ハタ・・・。一つ一つ揚げたてを目の前に置いてくれる。いちいち、塩かつゆか聞いてみたりする。さっくり旨い。日本酒が進む。種類を変えながら、四合は飲んだ。「相当、いけますね」と呆れられた。緊張の値段は5,600円。思わず出た言葉が「安いですね」。都内でカウンター越しに天ぷらを揚げてもらったら、いくら取られるだろう。

いい店なので月に一回は足を運んで、常連化を目指すことにした。翌月二回目の暖簾をくぐり、その翌月は・・・。「テトラから転落・骨折・手術」で、一回パス。「ちょっと、骨折しちゃって、ご無沙汰しました。てへへ」と、先週、久々に顔を出した。

釣りの話をするなかで、釣った魚を持ち込んでいいかと、聞いてみた。大将は「いいですよ。ただ、すぐにやれって言っても無理だから、3時くらいに持ってきて。そしたら夜には出せるから」と言ってくれた。来月、友人と船を仕立てて釣りに行くので、釣果を持ち込むことにした。釣ったキスを、天ぷら職人に揚げてもらう。今から楽しみだ。もっとも、釣れないことには話にならない。大将曰く、「まったく、期待してないですから」と、別の食材もご用意いただけるとのこと。行きつけの店、ありがたし。

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