房総の魚たち・陸っぱり釣り師の備忘録

房総の陸っぱりを中心とした釣行と、釣魚料理の記録。釣りのジャンルは、浮きフカセ、シーバス、陸から少し離れたボート釣りなど。これまで釣った房総の魚たちを紹介する「房総釣魚図鑑」や、エッセイなどもアップしていきます。

馴染みの店⑧ 最終回

このブログで度々登場している天ぷら割烹店が閉店することになった。友人にこの話をすると、最終日にわざわざ名古屋から来るという。閉める店の最後の日、どんな雰囲気か想像もつかないが、枯れ木も山の賑わいだ。湿っぽいより賑やかな方が良いだろう。

19時に予約して、来店したところ、口開けは我々2人だったが、すぐに5人の団体が来た。その後ぱらぱらと常連さんが来て、瞬く間にほぼ満席となった。

大将はバイトのアサちゃんに「今日は、常連さん以外は断って」と言った。アサちゃんは「ええっ。もし、私の知らない常連さんだったらどうするんです?」ともっともな反論をした。私を含めて、カウンターの常連客はゲラゲラ笑って「アサちゃんのジャッジでいいよ」「責任重大だ」と囃した。

この日のバイトはアサちゃんともう1人いた。最後だから2人にしたのかと思ったら、そうではなかった。大将はその子に「先方のママには話を通してあるから、今から行って」と告げた。どうやら、彼女に次の働き口を紹介したらしい。彼女は一礼して出て行ったが、すぐに戻ってきた。「向こうのママさんに、最後まで手伝ってきなさいって言われました」。この子がいるときに2-3回来たと思う。店の名前は知っていたので、「今度行くよ」と伝えた。

最古参のバイトのアサちゃんは、大将の一番のお気に入りだ。大将と彼女の掛け合いはほほえましくもあり、スリリングでもあった。彼女は受験生なので、大学が決まるまでバイトはしないとのこと。彼女がまかないを食べているときに、「よろず相談に乗るから、何かあったら連絡して」と言いうと、彼女は「何でもいいんですか?」と謎のほほ笑みを浮かべた。ま、連絡はないだろうけど。

夜も更け、店内はだいぶ賑やかになり、座がくだけてきた。友人は常連さんと意気投合していた。いつの間にか、大将はカウンターを出て、ボックス席に座っていたので、私もそっちに移った。何を話したか良く憶えてないが大将が「一度、娘さんに料理を食べてもらいたかった」と言ったのは憶えている。

友人をタクシーに乗せると、私はまた店に戻った。店の前で閉店の手伝いにきた大将のお母さんに会ったので、いろいろと長話をした。店に残っているのは、私ともう一人の常連だけだった。大将は二人にクリスタルのグラスをプレゼントしてくれた。それから、「これも持って行って」と、口の空いた焼酎のボトルを何本かくれた。

店に通ったのは1年ちょっと。後で数えてみると29回通っていた。(あと一回、行けばよかった)と苦笑い。いい店だった。料理もそうだが、結局、大将の人柄なんだ。
大将が東京で新しい店をやるときは、必ず行くと決めている。大将がやりたかったのがどんな店なのか、どんな料理なのか、楽しみにしている。客単価が高そうなので、常連になるのは無理だけど。

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