房総の魚たち・陸っぱり釣り師の備忘録

房総の陸っぱりを中心とした釣行と、釣魚料理の記録をアップして参ります。釣りのジャンルは、浮きフカセやルアー、陸から少し離れたボート釣りなどです。釣行記録は月に1-2度のアップになります。その間の埋め草として、これまで釣った房総の魚たちを紹介する「房総釣魚図鑑(五十音順)」や、エッセイなどをアップします。

馴染みの店⑦ 突然の別れ

先週末のことである。夜10時を過ぎていて、大分遅くではあるが、およそ一月ぶりに馴染みの店に顔を出した。慣れぬ仕事を引き受けてしまってバカに忙しくなった私は、釣りもそうだが、飲みの方もすっかりご無沙汰になっていた。店には客はなく、大将と差しである。

大将は、カウンターに置いたグラスに冷酒を注ぎながら、静かに「来月で店閉めることにしました」と、私に告げた。私は、数秒間、フリーズしていたと思う。

なんでも、店を買いたいという人がいて、良い条件で買ってくれるので居ぬきで譲るのだそうだ。売ってからどうするのか聞くと、東京で店を出すつもりだという。「千葉は、もういい」と大将は笑った。それから閉店まで飲んだ。閉店の手伝いに来たお母さんは、私の顔を覚えていて「お客さんが一番悲しいんじゃないの?」と、おそらく一番新しい常連客である私を気遣ってくれた。

帰り道、一人泣いた。一人で入店した初めての居酒屋だったので、この店は私の飲みの歴史そのものだった。釣った魚をさばいてもらったり、酒を持ち込んだり、いろいろとわがままも聞いてもらった。しかし、何といっても、大将との会話がご馳走だった。こんな店にはもう出会えないかもしれないと思うと、寂しくなった。

ま、仕方ない。唐突に訪れる別れ、これも人生だ。こうなったら、最後の日まで立ち会うことにしよう。この店はいうなれば初恋の人だ。間違いなく、死ぬまで私の中のスタンダードとして残るだろう。

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後日談:このブログをアップした日の夜に、お店に行ったところ、大将から柳刃包丁をプレゼントされました。一尺というものすごい包丁で、刃は作ってあるから、研ぐときには刃の傾斜に砥石を当てて研げばいいとのこと。オレにはもったいない代物です。やばい、また、泣きそうだ・・・。

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